生徒の向き合う時間を創り出した学校

学校現場の先生方が疲弊している。
いじめ、不登校、学力不足、モンスターペアレント、進学重点校対策、スーパーサイエンスを始めとする先進的なカリキュラム構築や運営等等、学校現場には様々な課題があり、学校の先生は大変だという話がある。

様々な報告書類の提出、会議の連続、様々な原因は考えらえられるが、組織のあり方を根本的に考え直す必要があるのかもしれない。プロジェクトマネジメントの概念を導入して学校の組織改革を行うという実践も必要であろう。少なくとも、プロジェクトが終了した時の感動を先生方は味わって欲しいが、目標をきちんと設定していないが為に(なるべく評価されないような目標を設定してしまっている為に)、その感動を味わえずに、疲弊ばかりしてしまうことも多い。

私は時間を生み出しながらも生徒とのコミュニケーションの質と量を増やす為に、ICTの技術を活用すべきだと考えているが、今回、こうしたICT技術以外で改善してしまった事例を見る事となった。

日経新聞(2011年2月7日)の記事を読んで、早速訪れたのが、東京都東村山市の大岱(おんた)小学校の西留安雄校長。

この学校は校長が在任の7年間で、問題学校から先進的な模範校へと変革を体験した。組織そのもののあり方が変わったのだ。
西留安雄校長はこの学校で校長経験2件目だったそうだ。通常3年程で交代になってしまうところを、延長して大岱小学校の改革に取り組んだ。

その目標は明確だった。
生徒と先生が向き合う時間を創りだす!

その為に無駄な作業を先生に課さないよう留意し工夫する。
組織変革の必要があれば、それまでの常識を打ち破った改革を実施する。
できた時間を活用して、教員同士が学び合う仕組みも取り入れ、生徒には学習の記録を日誌のようにつけてもらう。貴重な学習記録ノートがうず高く積まれていた。それをもとに一人一人の生徒の学習到達度を確認しながら、学習環境を整えて行く。学習到達度が遅れた子供たちにはドリル等を学校で用意して、補完授業の為の時間も創りだしていた。
運動会等の学校の行事にはOBである中学生や親御さんのボランティが応援。地域で学校を支えている姿も見いだされた。
ごく普通に起こっていなければならない事項ばかりなのだが、実はこれは学校現場では実現できていない場合が多い。
一人の生徒が頑張ってもだめ。一人の先生が頑張るだけでもだめ。それを取り囲む組織全体がこうした作業を応援するように変革されていなければ、決して長続きすることではない。

その施策が特殊なので、例えばメディアでは「職員会議を廃止」などという文字が踊るが、ポイントはひとつ。PDCAサイクルの後半を、プロジェクトの直後に行うという基本姿勢だった。反省はすぐに行い、改善計画を即座に立てる。改善目標がはっきりしていて、到達することが可能な計画が練られる。恐らく達成感も味わえる職場環境なのだろう。その意識は、教室の中にまで波及していて、教室は各先生方の細やかな工夫のかたまりがそこかしこに表現されていた。各先生が生徒達に達成してい欲しい目標やそのノウハウをわかりやすく図示していたり、あらゆるところで、生徒が達成した学習記録を誉め合う仕組みが施されている。一年中文化祭が展開されているような感じに見えた。

ちなみに大岱小学校では、各学年で他の小学校と比較して年間100時間程の学習サポート時間を生み出している。

この活動をぜひ西留校長の引退後も続けて欲しい。
続ける為の運用ノウハウは充分学内に溜まっている。
またこの活動が広く普及して欲しい。
その為の応援を私ができるのであれば、サポートを続けて行きたいと思った。

久しぶりにすがすがしい学校訪問だった。

尚、近々西留校長は本を出版されるという話も伺った。
今度「本のある時間」でも紹介してみようと思う。

また、全国の先生方が集まる発表会も近々に開催されるようだ。
2011年2月19日(土)
大岱小学校
〒189-0011 東京都東村山市恩多町4-17-1

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